なのに今は、こんなにも、
折れてしまいそう。
何がそうさせているのかはわからないが、
こんな息が詰まったような愛莉を、
自然と包み込んでいた。
大切なものを守るように、
優しく、強く、ぎゅっと。
愛莉の髪から、シャンプーだろうか、石けんの香りをほんのり感じる。
懐かしく思い、目を細めた。
幼い頃からから変わらない、愛莉の匂い。
どうか、
ここにいる大切な人の悲しみが、
少しでもなくなりますように。
そう念じて、細めた目を、閉じた。
……つつ、と もみあげを撫でる、
くすぐったい雫。
もわんとした熱気と風ひとつない空気の中、しばらく彼女の体温を感じていたら、じわりと汗がにじみ出てきた。
それを察したのか、腕の中の愛莉はもぞっと動く。
俺は目を開けて、腕を緩めた。
「ごめん、ありがとう」
ゆっくり離れて、一歩下がる。
こもった熱が解放される。

