「また今度ね、ハナ」
「うん、次は海ね!」
ふふっと微笑んで立ち上がる愛莉に続いて、俺も席を立つ。
「じゃあ気をつけて」
「うんっ。そらくん、バス教えてくれてありがとう」
満面の笑みを浮かべてお礼を言ったハナは、またね、と小さく手を振った。
うん、と軽く手を振り返し、バスを降りる。
そうして、ハナの乗ったバスが見えなくなるまで、その場に立ちすくんでいた。
「そら」
ふと、愛莉が呼ぶ。
我にかえる。
「ああ、行こっか」
暗い夜道の中、俺たちは肩を並べて歩く。
どこかでキュルルルル、と夏の虫が鳴いている。
ひと季節前までは夜になると冷え込んでいたのに、最近はこの時間になっても蒸し暑い。
俺の家を通り過ぎ、すぐそこの愛莉の家まで一緒に歩く。
愛莉の家が見えてきたとき、隣の存在がピタリと動かなくなるのを感じた。
ん?と振り返ると、愛莉は立ち止まっている。

