「大学病院前で降りればすぐ、いつもハナが乗ってる電車の駅が見える」
スマホの地図を見せながら説明する。
「へー、バスってこんなとこにも停まるんだあ、便利だね」
「地域の足だから」
そっかあ、と言って頷くハナ。
「ていうかそらくん、衛星写真派なんだねっ」
みてみて愛莉、と俺のスマホ画面を愛莉の方へ向ける。
ハナの温かい手が、重なっている。
「中学生くらいからかな?そらって地図見るときいつも衛星写真なんだよね」
「すごいね〜。私は目がチカチカするから平面図派だなあ」
「私も」
そう言ってふたりは控えめにくすっと笑う。
重ねれられた手は、すぐに離れてしまった。
しかし、触れられた部分の温度《ぬくもり》は、すぐには離れなかった。
ほどなくして、俺と愛莉の降りる駅がアナウンスされる。
「そろそろ私たち降りるけど、気をつけて帰ってね」
「うんっ。ありがとう愛莉」
バスが停車し、プシューというため息と同時にドアが開く。

