送るって、またふたりきりかよ。

もやっと俺の中の黒い感情がうごめく。


あいつはハナを見て、どうする?と問いかける。


「いいの?」

「うん。駅ならどうせ通り道だし」

「じゃあ、お言葉に甘えちゃう!」

「ん、決まりね。じゃあそういうことで」


解散しよっか、と言って歩き出すあいつ。


ハナはそれを追うように歩み出した、とき。


がしっ。


「わ、」


ハナは前進するのを阻まれ、静止する。



「そ、そらくん?」


わけがわからないような顔でこちらを見るハナ。


俺はとっさに、ハナの腕を掴んでいた。



「俺が教える」


バス、と付け加えて、ぐいっとその華奢な身をこちらへたぐり寄せる。


華やかな浴衣の袖が、ふわりと揺れる。



「今度はどうした、そらっち」


振り返ったあいつが、ため息混じりに言った。



黒い感情を抑えて、至って冷静に、もっともらしい理由を。

心が乱れないよう、穏やかに、穏やかに。


「浴衣。バイク乗れないでしょ」