いつもの、俺って。
厄介事は嫌い。
曲がったことも嫌い。
できるだけ面倒なことはしたくない。
でも、楽して大きなものを得ようとは思わない。
事を荒らげるのは時間の無駄だと思う。
だから人の顔色や気持ちはできるだけ汲み取って行動するように意識している。
それが、いつもの、俺。
「今日は何だか、穏やかじゃないね」
愛莉は穏やかに、そう言った。
「……なんでかな」
今度は俺も、穏やかに言う。
ふーっと深呼吸する。
今日は何だか、調子が狂った。
きっと不慣れな人混みのせいだ。
しばらく無言で歩き、最初に待ち合わせた神社の門が見えてきた。
もう周辺の屋台は片付けを始めて、さっきまでの群衆が嘘のように閑散としている。
しかし、人混みを抜けてもこの黒いもやもやはまだ、消えない。
「ねえねえ、みんなどうやって帰るのー?」
ハナが愛莉の肩を叩き、立ち止まる。
俺たちは振り返って互いに顔を見合わせる。

