「よーし、頑張ってはっきりさせるぞっ!」
私も浴衣の入った袋を握りしめて、立ち上がった。
ざわざわと騒がしい店内から、外へ出る。
蝉がひっきりなしに鳴いている。
からっとしたこの熱気は今にもやけどしそう。
もう、夏なんだ。
そばでパタパタとうちわを扇ぐ愛莉を見て、くすくす笑う。
「……なに?」
急に笑い出した私を横目に見たもう雫まみれの顔は不愉快そう。
「ううんっ、なんかね、愛莉っていつの間にかうちわパタパタしてるなーって思って」
「だって暑いんだもん」
そう言ってもみあげからたらりと汗を流す彼女は、意外と汗かきなんだと思う。
さすがの愛莉でも暑さには勝てないんだなあ。
「うふふ、愛莉って可愛い」
「わけわかんない」
あきれた顔で私を見つめて、ため息をもらす。
「じゃ、この夏、楽しんでいきましょー!」
おー!と勢いよく腕を伸ばし、軽くスキップ。
猛暑が私たちを包み込んで、
夏色に染めてゆく。
この夏、何かが変わるような気がした。

