「言ったでしょ、素直なハナのままでいてって」
「そ、そういえばそんな記憶が…」
春、屋上でお弁当食べたときだ。
「避けてばかりじゃ、いつまでたってもモヤモヤしたままよ」
「う、ん」
「その気持ち、ちゃんとぶつけてごらん。いつものハナらしく、まっすぐに」
愛莉の言葉って、
すごく優しくて、
すごく柔らかくて、
すごく強い。
「まっすぐ、に……」
「そう。怖がってても何も始まらない」
不思議だよね。
胸に、強く、刺さる。
「うん、そうだね…」
でもなんだか、
それはまるで、
自分自身に言い聞かせているようにも、
聞こえたよ。
「ま、少なくとも普通じゃないってことだよね。彼の中では」
そう言って愛莉は、にやっと笑った。
「普通じゃない、か〜」
それって、もっと頑張れば、
いつか、きっと、
手の届く距離になれるって、ことかな。
よし、と言って愛莉は席を立つ。
「夏祭りだね」
それは何を意味するのか、ひしひし伝わる。

