最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~

その教えは俺の胸にすうっと届き、一言一句を噛みしめながら頷いた。

俺たちの子供がいる未来……それが実現するかはわからないが、彼女がもう一度俺とやり直してくれるなら、今度こそ旦那に相応しい男になると誓う。


交流会が終了したあと、久礼さんと話したことで妻が恋しくなった俺は、ラウンジを出たところで電話をかけた。ただ声が聞きたいだけで電話をするなど初めてだ。

なんだかくすぐったいが、一絵の心地いい声や話し方に癒されていたとき、俺の正面から先ほどまで同じ会場にいた中年男性が近づいてくることに気づく。

坊主頭にあご髭を生やした、インパクトのある見た目の彼も、ネット事業を展開している四十五歳の社長。生まれも育ちも大阪の、バリバリの関西人だ。

これはいけない。まったく嫌な人ではなく、むしろ明るくフレンドリーなのだが、賑やかだし毎回決まって言われることがあるので、電話は切ることにする。

忙しなく一絵に「おやすみ」と告げた直後、ラグジュアリーな廊下に相応しくない声が響き渡る。


「ほな畔上くん、今日こそええ女の子がそろった店行こかー!」


予想通りのかけ声と共に、ぐいっと肩を抱かれ、俺はげんなりしつつ口の端を片方だけ持ち上げた。