最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~

奥さんも娘も溺愛している彼を微笑ましく思っていると、なにげなく問いかけられる。


「畔上は、まだ子供は考えていないのか?」


──子供。それ以前の問題を解決させるのに必死で考えてはいなかったが、俺と一絵の子供か……そんな宝物を授かったら幸せすぎるな。

よく考えれば、一夜だけとはいえ行為はしているのだから可能性はゼロではない。限りなくゼロに近いだろうが、もしも奇跡が起きたなら、俺は無条件で大喜びする。


「いつかは欲しいですよ。子供は嫌いじゃないので」
「へえ、意外だ」


久礼さんはやや目を丸くした。皆、俺に家庭的なイメージを持っていないらしく、同じ反応をされることが多い。

が、一応俺も小さい子を見れば癒されるし、笑わせたり、抱き上げたりしたいと思う。

それが好きな人との子なら、なおさら尊くて愛しく感じるのは間違いないだろう。

想像するだけなら自由だと、一絵が腕に赤ん坊を抱いている将来を思い描く俺に、落ち着いた声がかけられる。


「子供ができても、奥さんへの感謝や愛情はちゃんと伝えろよ。嫁を不安にさせないのも、立派な旦那の務めだ」