最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~


週明け、デートの詳細を聞いてきた瀬在を適当にあしらっていたのだが、やはり察したらしく『社長がここぞというチャンスをモノにできなかったとは……』と落胆していた。

致命的なことはさらにもうひとつ。一絵がご両親と会う日を具体的に決めたのだ。そこでいよいよ離婚の決意を表明しなければならない。

しかし、俺は人知れず葛藤したのち、ひとつの決断をした。松岡社長夫妻と会ったら、〝離婚したい〟ではなく〝彼女とずっと一緒に生きていく〟と宣言してしまおう、と。

一絵が聞く耳を持たないのなら、強行手段に出るしかないと考え至ったのだ。

彼女の意思を尊重できないほど、今の俺は切羽詰まっているらしい。だが、なにも変えられないまま、別れる結末を迎えるのだけは御免だ。


密かな決意を抱き、その日まで粛々と業務を遂行する。一絵の実家を訪問する前々日は大阪に出張で、俺はひとりイベント会場に足を運んでいた。

今日のイベントは、数百の企業や団体が、インターネットの技術動向やトレンドを伝えるためにデモンストレーションを行うもの。今回ジョインプレッションは参加しないが、事業の参考にするために見学をしに来たのだ。