最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~

衝動的にキスをしてしまい、自分自身が驚く。こんなふうに余裕がなくなるのは初めての経験だから。

唇を離すと一絵は瞠目していて、戸惑っているのは明らかだった。

……もう伝えるしかないだろう、この想いを。彼女を困らせるとしても、自分の気持ちに嘘はつけない。

覚悟を決め、背けていた目線を彼女に戻して口を開く。


「ひと──」
「帰りましょうか!」


話し出そうとした直後、予想外のひとことが飛び出して俺は呆気に取られた。

帰る? このタイミングで? そんなにキスが嫌だったのだろうか。

ひとりでペラペラとしゃべりながら歩き出す彼女を引き止めようにも、まったく聞く耳を持たない。あえて俺に話しかけられないようにしているのは明白だ。

頭を抱えたくなりつつ、これはもう無理だなと諦め、深いため息を吐き出した。

やっと伝えられそうだったのに、完全にタイミングを逃してしまった。いやそれより、嫌われている可能性が高いことのほうがショックだが。天国から地獄とはこのことか。

ひたすら続く彼女のどうでもいい話に相づちを打つことすらできず、俺は再び恋愛迷子状態になっていた。