最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~

正直な胸の内を吐露しているうちに、ひとつ納得したことがあった。一絵と距離を取っていたのは、昔と同じように失望されたくなかったからだと。

彼女がグラフィックデザイナーだというのも、大きな要因かもしれない。

俺は元々絵を描くのが好きで、将来はそれを活かした仕事をしたいと思っていた。

ところが、中学生頃に自分が色弱であるとはっきり認識し、その夢は諦めざるを得なくなった。細部まで色彩にこだわる仕事に就くのは、色覚にハンデを持つ者にはやはり難しい。

そうして、コンサルタントの父親の影響もあって経営の道へと進んだが、広告の会社を選んだのは少しでもこの世界に関わっていたかったからである。

そんな経緯から、最初はデザイナーの仕事を楽しんでいる一絵に対して、羨ましい気持ちも多少あったのだと思う。

しかしそれ以上に、彼女のデザインには惹かれるものがあるので素直に感心している。なのに、本人が意図した色と俺に見えている色は違うのだと思うと、気軽に口に出せないのが心苦しい。

こういった劣等感のせいで、今まで一絵との関わりを無意識に避けていたのか……。