最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~

不器用、か。そうなのかもしれない。そもそも、恋愛の類はだいぶご無沙汰しているし、こんなに悶々とするのは初めてと言っても過言じゃないが。

内容が頭に入ってこないのでタブレットの画面をオフにすると、瀬在の心配そうな声が聞こえてくる。


「あれ以来、社長は誰とも付き合ったりしなかったでしょう。なにげに気がかりだったから、やっと好きな人ができたんだなって安心したのに」


〝あれ〟というのは、おそらく大学時代に付き合っていた子との一件だろう。当時からつるんでいた瀬在は、このときのことも知っているのだ。

懐かしく、古傷がシクシクと痛む過去の記憶が蘇る。確かに、それがきっかけで女性関係が面倒になってしまったのは否めない。


「……今日、一絵の服が何色だったか覚えているか?」


なんの脈絡もない突然の問いかけをすると、瀬在は少し表情を硬くして答える。


「確か、淡いピンク色だったかと」
「俺には薄い灰色に見えた」


覇気のない声で呟くと、彼はやや気まずそうに目線を前に戻した。