最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~

なんってベタな展開に……! つまづいたのも、急接近してしまったのも恥ずかしい。


「す、すみません!」
「なんでなにもないところで転ぶんだ。ハリセンボンに笑われてるぞ」


少々呆れが交ざった笑いと共におかしな言葉を投げられ、私はしがみついたまま隣にある水槽に目を向けた。うっすら口角の上がった、膨らんでいない状態のハリセンボンと目が合う。

……なんか愛嬌があるな、ハリセンボンって。いやでも、決して笑っているわけではないってことくらいわかる。


「そう見えるだけでしょう」
「あっちのエイも笑ってる」


慧さんは、順路の先に見える巨大水槽を指差す。その中を悠々と泳ぐエイも、お腹側を向けると、鼻と口の形がのほほんと笑っているように見える……けども!

私はムッと頬を膨らませた。まさにハリセンボンのごとく。

いたずらっ子みたいにからかったあと、彼はおかしそうにククッと笑い、腕を掴んでいる私の手を離す。


「悪い。こうしていてやるから許せ」


離されたかと思いきや、手と手を繋がれ、心臓が軽くジャンプした。