──赤ちゃんの声が聞こえた。

包まれていた温かい海がなくなって戸惑うような、私を求めるような、可愛い泣き声。

ああ……無事生まれたんだ。めちゃくちゃ痛かったけど、外の世界に触れさせてあげられて、本当によかった。

その喜びに浸る間もなく、急に雪山に放り出されたみたいに寒くなってきて、意識が遠退いて、慧さんの声だけが聞こえてきた。

そういえば、好きって気持ちを伝えていないのは自分だって同じじゃないかと、陣痛を耐えながら気づいたんだ。私、バカだなぁって。

だから、意識が薄れていく中、これだけは言っておかなきゃと思った。

私、ちゃんと伝えられたかな。あなたが大好きって──。