本性を現したような荒っぽい口調で、自嘲気味に吐き捨てた。それはどこか切なげでもある。
俺に対してというより、菫に対して悪いことをしていると自覚しながらも止められない状態なんじゃないだろうか。
彼は伏し目がちなままこちらに足を踏み出し、俺たちの脇をふらりとすり抜ける。ひとつ深呼吸をすると、さっぱりとした口調になって言う。
「そうですね、やめておきます。ここまでバレているのに続けるのもバカらしいので。畔上社長には敵わないな」
口の端を持ち上げているが、目は笑っていない。本当にこれでやめることにしたのか、半信半疑でフロアに戻る増田のあとに続く。
総務部に戻るかと思いきや、制作部と仕切られた辺りで足を止めた彼は、急にこちらを振り向いた。
「でも社長、あなたは社員の皆に隠していることがありますよね?」
眼鏡を押し上げながら周りに聞こえるくらいの声でそう言われ、俺は眉をひそめる。増田の瞳には攻撃的な色が滲む。
「色弱者のあなたがデザインに関わる制作会社の社長になれたのは、実力でもなんでもなく、松岡社長の娘と結婚したからじゃないんですか? 一絵さんを利用したってことですよね」
俺に対してというより、菫に対して悪いことをしていると自覚しながらも止められない状態なんじゃないだろうか。
彼は伏し目がちなままこちらに足を踏み出し、俺たちの脇をふらりとすり抜ける。ひとつ深呼吸をすると、さっぱりとした口調になって言う。
「そうですね、やめておきます。ここまでバレているのに続けるのもバカらしいので。畔上社長には敵わないな」
口の端を持ち上げているが、目は笑っていない。本当にこれでやめることにしたのか、半信半疑でフロアに戻る増田のあとに続く。
総務部に戻るかと思いきや、制作部と仕切られた辺りで足を止めた彼は、急にこちらを振り向いた。
「でも社長、あなたは社員の皆に隠していることがありますよね?」
眼鏡を押し上げながら周りに聞こえるくらいの声でそう言われ、俺は眉をひそめる。増田の瞳には攻撃的な色が滲む。
「色弱者のあなたがデザインに関わる制作会社の社長になれたのは、実力でもなんでもなく、松岡社長の娘と結婚したからじゃないんですか? 一絵さんを利用したってことですよね」



