最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~


翌日、瀬在と共に増田を注意深く観察していた俺は、彼がサーバールームのほうへ向かうのを確認して席を立った。目配せした瀬在もついてくる。

サーバールームは一番奥まったところにあり、入退室はICカード認証で管理している。それを解錠される前に、「増田部長」と呼び止めた。

ぴたりと動きを止めた彼に、単刀直入に尋ねる。


「失礼ですが、USBなどお持ちではありませんか?」


ゆっくりこちらを振り向いた眼鏡の奥の瞳は、普段の穏やかさが消えていた。


「……いや、持っていませんが。どうして?」
「念のための確認です。ここ最近、頻繁にサーバールームを出入りしているようなので」


俺がなにを疑っているか、すでに気づいているはず。彼はわずかに動揺を表して目を逸らした。


「総務のサーバを確認しているだけですよ。失礼だな」
「申し訳ありません、警戒心が強いもので。あなたが名簿業者とお会いしていたという情報も掴んでいますし、セキュリティ意識を高めなければと思っていたんです」


名簿業者の話を出した途端、増田は表情を強張らせ、ギクリとしているのがわかった。ここまで調べられているとは予想外だったのだろう。