最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~

俺も真っ先に疑ったのは増田だったが、〝不倫しています〟と敬語を使っているのが引っかかった。

万が一これが菫だったとして、同じタイミングで増田が妙な動きを始めたこととなにか関係が……いや、さすがに考えすぎか。


「カラーユニバーサルデザインの企画も順調に進んでいるし、あまりゴタゴタは起こしたくないですね」


心配そうな瀬在の声で、思考をビジネスのほうへ戻す。

俺は以前から、色弱者に配慮したデザインを積極的に取り入れるよう、エムベーシックの関連会社たちにかけ合っている。中でも、特に力を入れてほしいのは社内研修だ。

見え方についての知識を正しく理解し、アドバイスや実践ができると認められた者に与えられる資格がある。それを取得するための研修を行い、技能を持つ有資格者のデザイナーを増やしていくことを提案していた。

今、それぞれの会社でようやくその取り組みが進められてきている。ジョインプレッションがそのモデルとなるため、問題を起こして印象を悪くするのは避けたい。


「もちろん、こんなことで足止めを食らうつもりはない。守るよ、大切なものは自分の手で」


力強く宣言すると、瀬在の顔にも頼もしい笑みが浮かんだ。