最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました～トツキトオカの切愛夫婦事情～

しばし雑談をして満足したらしい堂島社長を見送ったあと、さりげなく周囲を見回して瀬在に問いかける。


「瀬在、例の件はどうだ？」
「今週中にも調査結果がわかるのではないかと」


俺の言いたいことをすぐに把握した彼は、声をひそめて答えた。

先ほど堂島社長も言っていた〝敵〟が、まさに今ジョインプレッションで妙な動きを始めた気配がある。

その人物は、総務部長の増田。エムベーシックにいた頃、出世のために賄賂を贈っていたことが発覚し、問題になったそうだ。

ウチへ出向してくることが決まったとき、彼の素行については聞いていたため、当初から目を光らせていたのである。

彼が俺を目の敵にしているのは感じていたものの、特にこれといった悪さはしていなかった。ところが、ここ数週間でサーバールームに何度か入退室している記録があり、どうも怪しい。

そこで、探偵に素行調査を依頼したのだ。もしもなにか企んでいることがわかれば、問題を起こされる前に対処できる。

なにもないに越したことはないが……と思いながらオフィスに戻る最中、瀬在が顔を近づけて耳打ちしてくる。


「不倫疑惑も部長が投下したってことはないんですかね」
「なくはないが、あの書き方はなんとなく女性的な感じがするんだよな」