最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~

ため息しか出てこないエピソードを思い返している間に、瀬在がそれを暴露してしまったらしい。堂島社長はテーブルを叩いて「だっはっは!」と豪快に笑う。


「畔上くん……! あんた、顔に似合わず不器用なんやな~。ワシがたこ焼きやのうて、ふわふわパンケーキ焼くくらい似合わんな~」
「本人、結構気にしてるので、あんまりイジらないであげてください」


笑いを堪えて肩を震わせる瀬在を、じろりと睨みつけた。こいつの遠慮のなさはときに救われるが、今みたいに恨みたくなることもある。

傷に塩を塗りたくってくるふたりのおかげで、逆に開き直れそうだよ……などと思っていると、堂島社長が真面目な調子に戻る。


「まあとにかく、そういう嫌がらせする奴がおるっちゅーのは紛れもなく事実やからな」
「……そうですね」
「若くして成功しとる人の周りには、妬む人間や敵がひとりやふたりいてもおかしくない。ゲスい話やけど、案外身内に潜んどったりするんや。気ぃつけたほうがええで」


彼の忠告はその通りで、以前から俺も警戒していたことだ。すでにブラックリスト入りしている人物もいる。

俺は表情を引きしめて頷き、「心得ておきます」と返した。