最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~

以前、久礼社長に『奥さんへの感謝や愛情はちゃんと伝えろよ』とアドバイスされた通り、言葉や態度で示しているつもりだ。

しかしひとつだけ、〝愛してる〟という気持ちを言葉にして伝えられていない。

おそらく人生で一度も口にしたことのない五文字を、これまで何度も紡ごうとした。最近では一絵の誕生日に、プレゼントを渡したあとに告げようとしたのだが……。

『一絵』とソファに並んで座る彼女を呼び、振り向いた可愛い妻と視線を絡めた途端、喉がぐっと締まる感覚を覚えた。


『あ……あい』
『うん?』
『あい……アイ、スでも食べるか?』


こんなにたどたどしくては格好がつかないと、咄嗟にごまかしたものの、どちらにせよ情けない。

キョトンとした彼女はぷっと噴き出し、『さっきデザートでケーキ食べたばっかりじゃないですか~』と、けらけらと笑っていた。

甘い言葉は無意識に口にすることがあるのに、改まって告白しようとすると、なぜか出てこなくなる。言い慣れなくて緊張するのだろうか。

水族館デートのときは自然に告白できそうだったが、あれくらいの勢いがないとダメらしい。

とにかく、自分の不甲斐なさにひとり落ち込んでいたのだ。