最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~

堂島社長はコーヒーをひと口飲んだあと、眉をひそめてスマホをしまう。


「こんなことされたら、ほんまに胸糞悪いやろなぁ。心当たりがある奴はおらへんの?」


そう言われて、俺と瀬在は目を見合わせる。彼と推理した結果、ひとりの人物──菫の可能性が浮上したからだ。

社内の人間の可能性もなくはないが、今さらあんなことをするのは不自然だ。菫は一絵とも面識があるようだし、もし旦那が俺だと気づいたなら、あの投稿をしてもおかしくはない。

ただ、肝心の動機がわからないから、彼女だとは決めつけられないが。


「おそらく外部の人間です。妬みや僻みの部類でしょう」


堂島社長に詳しい話をしても仕方ないので淡々と答えると、彼は難しい顔をして腕を組む。


「まあでも、火のないところに煙は立たんとも言うやろ。不倫やないとしても、奥さんになんの不満もないとは限らへん。ちゃんと〝好きやで〟って伝えとるか?」
「堂島社長、それは……」


〝あまり聞かないでやってくれ〟と言いたげに、手の平を向けて瀬在が割って入った。なぜなら、その件については俺も悩んでいるからだ。