一絵とぎこちない状態のまま十一月も終盤になり、彼女はいよいよ臨月に突入した。
社内ではもうSNSの件は話題にされなくなったようだが、今俺の目の前には、例の写真をスマホに映し出して気の毒そうな顔をする男がいる。
〝ご愁傷様〟とでも言いたげに両手を合わせるのは、坊主頭にあご髭を生やした関西人社長。
「愛しの奥さんが不倫疑惑やなんて、心中お察しするわ~」
「疑惑でもなんでもありません。ただのでっち上げです」
真面目なんだかふざけているんだかわからない堂島社長に、俺は口の端を引きつらせて即座に返した。たぶん、額には怒りマークが浮かんでいる。
どうやら堂島社長もたまたまあのリプライを見ていて、仕事でエムベーシック本社に出向いた今日、一応俺を心配して会いに来たらしい。
急にオフィスにやってきて、ご丁寧にスクショしておいた写真を見せてくるものだから、げんなりしつつひとまず二十五階にあるラウンジに移動した。
そのとき一緒にいた瀬在にも「ひと休みせな!」と社長が声をかけ、三人でフリースペースのテーブル席に座っている。彼はなぜか俺と瀬在をセットにしたがるのだ。



