最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~

瀬在さんの口から出たものは意外な事実で、私は目を見張った。

慧さんが私のためにわざわざ選んでくれたの? 他の社員とは違うという意味なのか。もしかして、これをきっかけに仲直りしたいと思ってくれている……とか?

勝手に期待をして胸をトクトクと鳴らす私に、瀬在さんは頼もしい笑みを浮かべる。


「一社員としてはもちろん、奥様としても、社長はあなたを大切に想っていますよ」


彼の言葉は、慧さんとぎこちなくなって萎れかけていた心に、太陽の光を当ててくれたみたいだった。

少しだけ元気を取り戻し、「ありがとうございます」と笑みを返す。慧さんが出張から帰ってきたら、わだかまりを消すくらいの笑顔で感謝を伝えようと心に決めて。


瀬在さんが仕事に戻ったあと、入れ替わりのようにしてやってきたのは増田部長だ。


「松岡さん、あれ持っていくの大変でしょ。僕、車だから家まで送るよ」


デスクに置いてある抱き枕を指差して言われ、私は確かに困るなと迷う。花もあるし、どれも重くはないけど荷物がいっぱいだ。