最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~

そこで出た中で有力な容疑者は、私と慧さんのことを知っている外部の人間。社内の人は私と高海が以前から仲がいいのを十分知っているし、今さら不倫疑惑をかける理由がわからないからだ。

そう推測し、決して多くない私たち共通の知り合いを頭の中で検索していると、ふとある人物の顔が浮かぶ。

──菫さんだ。

彼女がもし慧さんの知り合いだとしたら、ありえない話ではない。あの優しい彼女が嫌がらせをするなんて、考えたくもないけれど……。

ふたりが知り合いかどうかが再び無性に気になり、私はランチを抜け出して菫さんに電話をした。

しかし、コール音がするだけで出る気配はない。仕方ないので電話は諦め、もうひとつの手段に移る。

早めにオフィスに戻った私は、午後の仕事が始まる前に「ちょっと聞きたいことが」と言って、瀬在さんを呼び出した。慧さんにバレないように、ロッカーの陰に隠れて小声で話し出す。


「急に変な質問をして申し訳ないんですが……小宮山 菫さんという女性をご存じですか?」


問いかけた途端、彼の中性的なお顔が明らかに強張った。ギクリとした様子で、ぎこちなく質問返しをしてくる。