最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~

「すみません、瀬在さん。お騒がせしてしまって」
「いえ、高海くんも災難ですね」


同情する瀬在さんに、高海はわずかに苦笑を返したものの、すぐに険しい表情で本音を吐き出す。


「ったく、くだらねぇ嘘書き込みやがって……皆に弁解するのが面倒すぎる」
「でっち上げの記事を載せられる芸能人って、きっとこんな心境なんだろうね……」


麻那はいつもののんびりさを少し取り戻して、しみじみと呟いた。私たちの強張った感情を和らげようとしているのだろう。でも、今の私には笑える心の余裕がない。

瀬在さんは腕を組み、冷静に客観視する。


「事実ではないのだし、すぐに静まるとは思いますが、万が一社員の中の誰かが発信源となると少々厄介かもしれません。社長や一絵さんを貶めたい人間がいるわけですから」


彼が言うのはもっともで、胸がキリキリと痛む。知らないうちに、誰かの恨みを買ってしまったのだろうか。

慧さんは家を出るまではいつもと変わらなかったから、その時点では気づいていなかったと思われるが、彼の耳に入るのもおそらく時間の問題だ。

今、彼は朝一の会議に出ていてこの場にはいない。もしすでに知っているとしたら、今頃どう思っているのだろう。