最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~

高海みたいに考えるのはいたって普通だし、私も他人の話を聞いたら同じように思うかもしれない。

でも、私たちは違う。決定的な亀裂が生まれて離婚話をしたわけじゃなく、むしろ絆ができる以前のことだから。


「私たちは大丈夫だよ」
「信じられない」


明るく笑い飛ばしたものの、やはり説得力はまるでなく、無愛想な声で突っぱねられた。どう伝えればわかってもらえるのだろう。

悩みつつ、似たようなやり取りを繰り返しているうちにエレベーターが到着し、微妙な空気を引き連れて誰もいないその箱に乗り込んだ。

高海は怠そうに壁に寄りかかり、額に手を当ててぶつぶつとひとり言を呟く。


「ずっと引きずっててようやく諦めがついたと思ってたのに……離婚届を書いてたなんて知ったら、またぶり返しちまっただろうが」


それはどういう意味なのかわからないが、表情がとても暗くて苦しそうなので、頭痛がひどくなっているんじゃないかと心配になる。


「なんのこと? ていうか、大丈夫──」


高海の肩に触れ、顔を覗き込んだ次の瞬間、急に視界が変わった。