結子さんが帰国した数日後の八月中旬、いつも以上に暑く感じる妊婦の夏だが、冷房の効いたオフィスで仕事は順調にこなしている。
午後十二時を過ぎた今は、とある精密機器メーカーのサイトを作るにあたって、クライアントと打ち合わせした内容をチームメンバーで共有したところ。
話はまとまったので、リーダーである男性ディレクターがノートパソコンを閉じながら言う。
「じゃあ、変更点は以上。サイト内に使用する写真はクライアントから送られてくる予定なので、よろしくお願いします」
「はい」
メンバーの私たちはそろって返事をして、各々席を立つ。私もさっきからお腹の虫が鳴いているので、早くお弁当を食べたい。
麻那はまた別のクライアントとの打ち合わせに同行しているので、今日はお弁当を作ってきた。ひとりで社食に行くのも寂しいし、オフィス内のカフェスペースで食べよう。
そんなふうに思いつつ腰を上げると、チームメンバーのひとりである高海が、いまだにミーティングテーブルから離れていないことに気づく。片手で頭を抱えていて、表情は冴えない。



