最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました～トツキトオカの切愛夫婦事情～

「一度は離婚しようとしましたが、話し合って、少しずつ距離を縮めて、やっと夫婦だと胸を張れるようになりました。もちろん慧さんは不倫なんてしていません。私たちをすごく大切にしてくれています」


私の言葉で、いくらか毒気が抜けた表情に変わった結子さんは、「……本当？」と確かめるような視線を慧さんに向ける。

彼は胸倉を掴まれていた手をそっと離し、テーブルのほうへ歩き出す。そして、離婚届を手に取った。


「だから今、こうしようとしていたところだ」


そう言って、潔く用紙を破いた。バラバラになったそれをダストボックスへ捨て、慧さんはきりりとした瞳で結子さんを見据える。


「神様なんかじゃなく、一絵に誓った。もう二度と離したりはしないと」


力強い声色で宣言され、胸がぎゅっと締めつけられた。

彼は私にも真摯な眼差しを向け、「姉さんも一絵も、安心してほしい」と言う。それを聞いた結子さんは、少しだけ思案して納得したように頷く。


「……そう、わかったわ。あなたたちを信じる」


いつもの美しく明るい表情に戻った彼女に、私はほっと胸を撫で下ろした。

すると、彼女は苦笑を漏らし、さっぱりとした口調で話し出す。