最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~

私たちは一度目を見合わせ、急いでリビングに戻る。


「ちょっと待っ──!」


ふたりで声をそろえて阻止しようとするも、時すでに遅し。結子さんはテーブルの上の用紙を見下ろしていて、持っていた紙袋をドサッと床に落とした。


「……え? なに? これ……離婚届? りこん、とどけ……」


ボソボソと呟かれる声を聞きながら、私は無意識に口元に、慧さんは額に手を当てた。

直後、結子さんは驚きや困惑、怒りがごちゃ混ぜになったような形相で、勢いよくこちらを振り向く。


「はぁっ!? ふたり、離婚しようとしてたの!?」
「ち、違うんです! これにはワケが……」


そりゃ誤解しますよねー!と思いつつ、私はなんとか弁解しようとする。しかし彼女は、かまわず慧さんのもとにずんずん詰め寄る。

とっても険しい顔で「どういうことよ、慧」と低い声を出し、ぐっと胸倉を掴んだ。

ひいぃ、恐ろしい……。美人が怒ると迫力がありすぎる。


「あんたねぇ、女の戸籍にバツをつけさせようっての? しかも子供まで作っておいて、なんて無責任な……! まさか不倫? 妊娠中に不倫なんて、どっかの政治家みたいなゲスいマネしてんじゃないわよ!」
「してない」