最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~

気の早い父は、男の子だったらああして、女の子だったらこうして……と妄想するばかり。

一方の母は、さっぱりとした性格だが心配性な一面もあり、つわりの最中は頻繁に手料理を届けてくれてかなり助かった。

そして、慧さんと目元が似ているおっとりとした品のいいお義母様も、個室に案内されてすぐ、私に優しく声をかけてくれる。


「一絵ちゃん、体調は本当にもう平気なの?」
「はい。今は逆に食欲がありすぎて困っています」
「そう。食欲があるのはいいことよ」


正直に答えると、お義母様はふふっと上品に笑った。私の隣の席につく母も、「今日は好きなだけ食べなさい」と上機嫌だ。

すると、母はなぜか顔を近づけてコソッと耳打ちしてくる。


「実はこのお店、『妊婦さんへの気遣いがしっかりしているらしい』ってお父さんが選んだのよ」
「そうなの!?」


意外な事実に、私は驚いて目を丸くした。

確かに、ここは和室だけれど、妊婦が長時間座っていてもつらくない掘りごたつの席だし、冷えないようブランケットも用意されている。さらに、母は「お茶もノンカフェインのものに代えてくれるんですって」とつけ加えた。

やるじゃない、お父さん。呑気に初孫を妄想しているだけじゃなかったのね……。