最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~


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私が就活を頑張れたのは、あのとき励ましてもらったおかげでもある。めでたくジョインプレッションに入社してからは、再会した慧さんをずっと意識していた。

部長としてもたまにデザインのことでアドバイスをしてくれて、博識で仕事にそつがない彼を尊敬し、憧れてもいた。

それはいつの間にか恋に変わっていたけれど、意識するようになった最初のきっかけは初対面の出来事だったのだろう。

なんだ……私、ひと目惚れも同然だったんだ。

夜になっても、つわりが治まり始めてから一緒に眠るようになった慧さんのベッドで、懐かしい日に想いを馳せていた。

そこへ、Tシャツにスウェット姿で前髪も下ろした、ラフな姿も素敵な旦那様がやってくる。私の隣に入ってきた彼に、身体を向けて問いかける。


「慧さん、私たちが初めて会ったときのことは覚えていますか?」


唐突な確認にもかかわらず、彼はすぐに「ああ」と頷く。


「君はまだ学生で、エムベーシックの社長室にいた。ポートフォリオを見たな」
「そうです! よく覚えてましたね」


細かいところまで忘れられていなかったことが嬉しくて、私は目を輝かせた。