最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~

「これは……馬?」
「猫です」
「猫」


彼が予想外だと言いたげな様子で繰り返すのも無理はない。私の描く絵は小学校低学年の子と同レベルだから。

これ、私的には渾身の出来なんですけどね。やっぱり猫には見えませんか……と内心ヘコむ私に、畔上さんはなぜかメモ帳を手で示して「貸してみろ」と言う。

なにをするのかは謎だが、とりあえず言われるままにメモ帳とペンを渡した。彼は私の隣にやってきて腰を下ろし、なにかを書き始める。

さらさらとペンを走らせる彼にハテナマークを浮かべていると、二、三分ほどでメモ帳を返された。


「俺が思う猫はこれだ」


その言葉と共に目に入ってきたのは、デッサンしたようにクオリティーの高い猫の絵。毛並みやつり上がった目がリアルで、かつ可愛らしい。


「うわぁ……すごい、めちゃくちゃお上手ですね! なにも見ずに、しかもこんなに早く描けるなんて!」


私は目をまん丸にして、感嘆の声を上げた。

絵の上手さといい、ポートフォリオを知っていることといい、やはりこの人はデザイナーなんだろうか。興奮が冷めやらぬまま問いかけてみる。