「………」
「…さ、さぁーて!肉食べよか!」
今ここで自分がした事を誤魔化すかのように、不自然に声を上げているなずな。
俺の手背に触れていた手も離れ、目の前のテーブル上にあるフードパックの肉に手を伸ばす。
そして、再び肉を手にしたなずなは、中を見つめて「えへへ…」と、照れ笑いをしていた。
「良いお肉は冷めても美味しいんです…」と呟きながら、手元の箸で一切れつまみ、その口に放り込む。
一口行ったぞ。
すると「んんー!」と声をあげ、途端に顔が歪んでだらしない笑みを浮かべていた。
「うまぁぁぁ!…肉汁、塩コショウ絶妙!うまあぁぁぁ!」
いつもの御満悦の雄叫びをあげて、その箸がぐいぐいと進む。
肉の味を噛み締めては「うまー!ステーキうまうまー!」と、声をあげていた。
そのうち、あの残念お嬢さんがやってきて、「大好きなお肉が美味しくて良かったね」と模範解答のような言葉を掛けられている。
「ステーキうまー!うまー!」
うまうましつこいぞ。
…と、思いながらも。
好物のステーキを頬張って、ニコニコ御満悦のなずなの笑顔から、目が離せずにいた。



