まさか。まさかまさか。
ほんの数分前に彼女になった子の誕生日が、実は今日でした。
…だなんて、誰も想像しない。
なのに、俺が持ってきたのは、フードパックに入ったおみやげのステーキだけ…!
年に一度のお祝いすべき大切な日なのに。
こんなこと、ありますか…!
わかってたら、もっといろんなもの用意させたのに!
プレゼントだって!
今度は俺がキョドってソワソワし出す。
しかし、その様子はバッチリなずなに見られていた。
「っていうか、何で伶士がソワソワしてんの…」
「だ、だって!今日だってわかってたら!…それに、プレゼントとか!」
「あー。それはいいよ、別に」
「よ、よくない!」
「ホントいいって」
「何で!」
「…だって、もう貰ったから」
そう言って、なずなは。
自分の傍にあった、俺の右手に手を伸ばして、手の甲にちょこんと触れる。
「は…」
不意を突かれて放心しかけそうになるも、なずなは視線を合わせてくる。
大きな瞳で見つめられると、ドキッとさせられるが。
「…そゆこと」
一言呟くと、照れ臭そうに視線をふっと下に逸らしていた。



