「…あのさぁ」
呟きかけて、もう一度グイッと顔を近付ける。
「…言っとくけど、ただキスがしたいだけでこんなことをするんじゃないぞ、俺は」
グラグラ泳いでいたその目と、視線がひとつになる。
「へ…」と、間抜けな声がした。
「相手がなずな、おまえにだからするんだ。他の女には頼まれてもこんなことしない」
すると、潤んだ瞳が…見開いていく。
「俺がこんなことをする相手は、おまえだけだ。…好きだから」
再び顔を近付けていくと、その大きな瞳に吸い込まれそうな気がして。
…いや、寧ろ吸い込まれてみたい気分にもなって、目を閉じてみる。
そんな中で、そっと口づけた唇は。
温かかった。
唇を離すと温もりも消えて、惜しいけど。
開いた視界の先には、依然固まり続けて呆然としているなずなの顔があった。
「な、なんで…」
出した声が小さくて、震えていると思ったら。
顔が次第に歪んでいき、目がうるうる潤み過ぎて真っ赤になっていた。
「なんでだよ…」



