(ったくよぉ…)
やはり、そうだった。
確信してしまうと、複雑な思いもまた出て来る。
「…俺はただ、おまえとなずなに復讐の鬼にはなって欲しくないんだよ」
大切な友人をあんな目に合わせて、憎い事は憎い。
でも…その友人の大切にしている子供達が、復讐心を激らせる鬼のようになってしまうのは、何ともやり切れない。
こうなった今、親代わりを買って出ている身。
復讐心のあまり、人の心を投げ出すような真似だけは何としても…。
そんな大切な子供達の一人、剣軌にじっと見つめられている。
さっきの般若のような顔貌ではなく、いつものクールな表情がどこかツンとした程度になっていた。
「…心配には及びません、橘社長。こう見えても俺は冷静ですよ?」
「本当かコラ」
「ええ、本当です。俺がここで嘘をつくメリットありますか?」
「………」
あるわ!と言いたいところだが、弁の立つヤツの相手は面倒くさい。
ここは何も言い返さないでおこうと、口をつぐんだ。
(やれやれ…)



