「それはわからない…しかし、万が一出来たとしても、それは出来ない…『夢殿』の力を覚醒することすら、それはあってはいけません!」




想像以上に激昂する剣軌に、皆黙って驚くしかない。

しかし、例え総本山の命令とはいえ…必要以上にムキになっている。

その事に違和感を覚える者もいた。



「それに、もし覚醒したとなれば、《マントラ》だけではなく、この世界に住む人間たちも動き出してしまう…この世界に、再び争いが起こることはあってはならない!」

「わ、わかった。座れ。座れ。…いや、わかるけどよ。でも…」

「…それに、別の方法に頼らずとも我々がヤツを葬ります。…この手で、必ず。そして、優さんをあの術から必ず解放する」



…その一言で、わかってしまった。



あくまでも『夢殿』云々は建前で。

怒りを抑えに抑えまくった、静かなる最後のセリフが本音だろう。



剣軌は何としても、自らの手でヤツを葬りたいのだ。

大切な人を傷付けた、忌むべき者を。