「…え?俺の息子、術者だった?」

「まさか。んなワケないでしょ」



窓側の席に向かい合わせに座っている二人は、ボケツッコミをしているが。

剣軌は至って真剣だ。




「頼智くんが術者の可能性というのはないと思いマス。霊圧まるでゼロですよ。年齢が年齢だけに、覚醒したとも言い難いデス」

「じゃあ何で…」

「…剣軌。小笠原さんの目撃証言なんだけど」

「ん?」

剣軌の隣に座る哲太も、また真剣というよりは、眉間にシワを寄せて物難しい顔をしながら言葉の続きを口にする。



「リグ・ヴェーダは、それを《『橘』の加護》と言っていたんだって」

「『橘』の加護…?」

「あと『術の選択を間違えた』とも」



橘の加護、とは。



その不可解なワードに、その場にいた全員が考え込んで黙る。



橘の加護とは、つまり『夢殿』の加護なんだろうか。

もしかして、本当にその加護というものがあるのならば。

ひょっとして…ヤツの【無限の夢】は。



(………)



全員の頭の中の考えが、一致する。



しかし。



「………」



誰もその一言を口に出来ずにいた。