…任務には、全力で当たるしかないんだ。
私が葛藤しようが、どうしようが。
時間は止まらず過ぎていく。
迷える時間を与えない、この世の中はとてつもなく残酷だ。
…でも、そんな世の中でも、伶士には笑っていて欲しいから。
ただ、おまえを護るそのために。
私は、走る。
走り続けるしか…ないんだ。
伶士の盾となり、リグ・ヴェーダの鴆毒『夢魔』三本目を胸に受けて。
致死量を遥かに超えて、その意識を失おうとも。
『なずなっ…!』
伶士の声が…聞こえる。
幻聴…?
なのかもしれないけど。
私は、目の前の暗闇に手を伸ばす。
死ぬ、その前にもう一度。
最期に、一度だけ…。
女の身勝手な欲望を、押し付ける。
…いや、恐らく届いてない。
意識は途切れて、暗闇に入り込んでしまった。
頭の中には、走馬灯が駆け巡って。
もう、死ぬんだ。私。
…あぁ、親父。
先立つ不幸をお許しください。
任務半ばで朽ち果てた娘を…音宮の名前に傷を付けたことを。
いや、殉職。名誉の戦死を遂げられたのだから、讃えられるだろうか。



