ふん。自分が蒔いた種だろが。ろくてない。
…でも、その光景を目にすると、言葉では表現しづらい寂しさを感じたのは、言うまでもなかった。
『なずちゃん、やっちゃったね…お客さん帰っちゃったよ?』
今のやり取りをカウンターから眺めてたのか、アルバイト店員の咲哉くんが目を丸くしたままでいる。
『…いいんだ、それで』
『え?何で?』
『若い二人のゴタゴタだ。勝手にやらせとけ』
『…随分達観してるね。おじさんみたい』
『………』
こんな若い娘におじさん…。
…けど、言葉の通りだろ。
あの二人の込み入ったことは、私には関係ない。
でも、こんな胸くそ悪いのは、何でだろう。
(………)
『…ま、いいや。咲哉くん、お腹減った。今日のランチ何?』
『あ、いいの?今日は粗挽き肉のハンバーグ。食べる?』
『おおぉぉ!食べる食べるハンバーグ!』
…もう、気にするのはやめよう。
ハンバーグ食べてアゲていこう。
私の心を癒すもアゲるも、ただ肉。それだけ。
意味のわからない寂しさとか、胸くそ悪さとか。
もう、やめだ。



