《なずな、また明日》
私は、ただ。
伶士には、笑っていて欲しいだけなのに…!
『幸い、橘殿本人は『夢殿』のことを全く存じ上げておりませんし、その力を継承しているのみで力の覚醒には至っておりません。…万が一覚醒となると、この国は混沌とするでしょう。その力を覚醒させないよう、監視し待衛するのがなずな、貴女の役目です』
『………』
『…いいですね?なずな』
御意、だ。御意。
でも、声が出ない。
畳の床につけた両掌が、ぷるぷると震えているのがわかる。
『…なずな』
次のマニュアル通りの反応に移らないためか、横から剣軌の低く冷たい声がした。
ショックを隠せない。
こんなの、嫌だ…!
しかし、御館様の命令は陰陽師にとっては絶対。
拒否しようものなら、不敬罪、反逆罪…。
(………)
…いや、誰が拒否しようものか。
落ち着いて考えろ。前向きに。
他のそこらのワケわからないヤツが、伶士の傍にいるよか全然良いはずだ。



