しかし、ここで『夢殿』が出現したとなれば。
その力を掌握し、我が物にしようとする輩が現れるかもしれない。
欲に惑わされた者同士の争いだって起こる可能性がある。
伶士に、危険が及ぶ…。
《幸せに、なれ》
何で、伶士が…!
茫然としつつある中でも、御館様の話は続く。
『…そして、早速、リグ・ヴェーダがその力を狙っているようですよ?何を企んでいるのかは知りませんが』
…えっ!リグ・ヴェーダが?!
まさか、ヤツの夢渡りの力で、夢見の予知夢を見ようと…?
『…そこで、なずな。貴女に命を授けます』
『へっ?!…は、は、はい』
我に返って、慌ててマニュアル通りに頭を下げる。
動揺がおもいっきり滲み出たところを見られて、おもいっきり剣軌に睨まれた。
あぁ、後で怒られる…。
そして、御館様は私に命を与える。
道程が険しく、残酷な命令を。
『音宮なずな。次期音宮家当主として、夢見の最高峰、『夢殿』橘伶士殿の侍衛を命じます』
この世は、とてつもなく残酷だ。



