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「昔話?…ですか?」

「うん。かなり昔の話だけど…」

「………」



なぜ、ここで昔話なのか?

首を傾げていると、菩提さんは笑いかけてくる。



「あはは。君が何故『夢殿』と呼ばれるのか、何故君があのクソヤローに狙われるのか、そのルーツのお話」

「俺のルーツ…」



俺のルーツ、ご先祖さまといえば。

橘グループ…かつて橘財閥という小さな地方財閥だったという。

しかし、戦後に建設業を始めてから飛ぶ鳥を落とす程の急成長を遂げて、更にグループから離れた札幌に本社を置く事で、その成長を止める事はなく、それにつられるように、他の部門も業績を上げて、現在に至るという。

今は亡き曾祖父、現在の祖父の貢献が強い。



「…そんな俺のご先祖さまと今の状況と関係あるんですか」

「大いにあるんだよ、これが。…そして、優さんが、君のお父様のボディガードとしてこの地に単身で来たことにも繋がる」

「え…」

「…時は、第二次世界大戦の真っ最中」

「えっ。そんな昔…」