「そんな…!」
「…術を掛けられてから間もない時期だったら良かったかもしれない。でも、三年という月日は長過ぎた。ヤツに魔界に逃げられてしまったばかりに…」
おじさんのこの眠りの呪詛を解くには、黒い翼の彼から魔力を取り上げるか、存在そのものを抹消するしかなくて。
しかも、もしそれを成したとしても。
この、眠りの術が解けたとしても。
おじさんが目を醒まして、元通りになるのではなく。
目を醒ますことなく、死ぬ…。
こんな…。
こんな、残酷な現実が待ってるなんて…。
「優さん…不甲斐ない弟子で、すみません…」
悔しさを浮かべる表情そのまま、菩提さんは寝たままのおじさんに囁いて、手をかけていたサイドレールをグッと握る。
その手はカタカタ震え、菩提さんの今の心情が滲み出ているようで。
それが伝わってくるように、胸が痛む。
それに、これは菩提さんの不甲斐なさのせいじゃない。
誰がどう見ても、これはやることやって逃げたという、当て逃げのような彼に非があるのは明確で。



