しばらく進んで行くと、薄暗い中、電気が
煌々と灯されている部屋がある。
ナースステーションだ。
ちょうどそこから懐中電灯を持った白衣姿の看護師さんが出てきた。
「あら?剣軌くん。こんな時間に?」
「こんばんは。夜分遅くすみません」
20代後半と思われる若さの看護師さんに、菩提さんは頭を下げている。
看護師さんは「いいのよいいのよ」と微笑んでいた。
「だけど、消灯過ぎてるからあまりうるさくしないでね?」
「はい、もちろんです」
それだけの言葉を交わして、看護師さんは手を振りながら、すぐそこの病室へと入って行った。
顔見知り?いや、顔馴染み?
それに、消灯過ぎの病棟にいるのに、何の注意も受けないなんて。
普通なら「面会時間過ぎてますよ!」とか、怒られない?
まるで、それが当たり前のように。
「…さ、行こう。突き当たりの部屋だから」
「は、はい」
そして、再び歩き始める。
しばらく進んだのち、菩提さんは突き当たりの一番端の部屋で足を止めた。
(え…)



