いったい、何の話をされるのか。
想像がつかない。
互いに無言のまま、胸をドキドキさせながら着いて行く。
そして、辿り着いたところは…階段?
「ちょっと三階まで行くよ?大変だけど」
「は、はい」
後ろにピッタリとくっついて、灯りが少ない薄暗い階段を上る。
菩提さんの背中を見ながら、上がる階段。
何の会話もなく、それが一層緊張を増していた。
「まずは、会ってほしい人がいるんだ」
階段を三フロア分上りきり、階段室のドアに手を掛けたところで、菩提さんがやっと口を開いて、そう俺に告げる。
「え…?」
「ま、会えばわかる…かな?消灯過ぎてるから静かにね」
会えばわかる、って、俺の知ってる人なのか?
階段室のドアを静かに開けると、そこは廊下だった。
少ないダウンライトに照らされた、薄暗い廊下。
そこに出てみて、わかるのは…ここ、病棟?
入院患者さんのいる病棟…?
菩提さんは、その廊下に出てどんどん進んでいく。
その背中を鼓動がうるさくなってきた旨を抱えて、後を追った。



