兄貴にイジられてムキになり、肘で小突いている親父を苦笑いしながら見ていて、ふと思う。
《『護られる』のも楽じゃないんだよ》
親父が俺に忠告したことを、こんなにも早く痛感させられることになるなんて。
思いもしなかった。
そんなことを考えながらも、助手席に乗りこむ。
親父と兄貴に見送られ、車は発進し。
戦場となったホテルを後にした。
…しかし、何故。
俺も同伴させてくれる事になったんだろう。
車が走り出して早々、チラッと振り返って後部座席の様子を伺う。
座席の背もたれが倒されてフラットになったところに、なずなは寝かされていて、毛布が掛けられていた。
傍には玲於奈が付き添って座っている。
本当に大丈夫なんだろうか…と、不安が募る。
「大丈夫だよ。意識戻ってないけど、寝てるようなもんだから」
菩提さんは、運転中で前を向いたままそう話す。
「あの…」
「ん?」
聞きたい事があって口を開くと、菩提さんは前を向いたまま返事をする。
彼の横顔を見ながら話を続けた。
「…どこの病院に行くんですか」



