俺のボディガードは陰陽師。~第四幕・夜に抗う~


「では、社長。行ってきます」



すでにエンジンのかかったハイエースの前で、菩提さんは親父に頭を下げる。

「菩提、頼んだぞ。俺はこのホテルにいるから、事が終わったら連絡をくれ。忠晴に迎えに行かせる」

「はい。お任せ下さい。…伶士くん、助手席に乗って」

「は、はい!」

そう言って、菩提さんは運転席の方へと回り込んで行った。



俺も指示通りに助手席に乗ろうとしたが。

…その前に、ひとつやっておくべきかと、後ろを振り向く。

お見送りをしている、親父の方へ。



「…親父」

「ん?」

「…さっきは、ごめん」

「………」



…あの時は邪魔されたくなくて、必死で。

当たり前だけど、本当は『殺すぞ』なんざ思っちゃいない。

申し訳ない…。



親父は、余計な事は何も言わず。

フッと柔らかく笑っていて。

俺の顔を見て、黙って頷いていた。



「…気をつけて行って来い」

「はい」

「あー!親父、ホッとしてるしょ?喜んでるしょ?伶士に嫌われてなくてよかったって!泣きそうー!」

「…余計なこと言わんでいい!」