なずなを俺から取り上げたもさ男は、既にこっちに背を向けて屋上を出ようとしていた。
しかし、俺が怒号をあげようがいい度胸で完全無視して足を進めている。
こんなに、苦しいのに…。
「…そいつは、俺のせいでそんなんなっちまったんだ!」
痛い。痛いんだ。
「だから…だから、俺の責任で…くだらない意地なんかじゃないぃぃっ!」
…『護られる』と、いうことは。
思いの他、苦しくて痛くて。
何を、どうしたらそこから逃れられるのか、わからない。
だから…!
(だから、俺が…!)
だがもさ男は、そんな俺のことなんか、一向に完全無視してなずなを連れて行く。
その態度にイラッときた。
おまえに…この痛みの何がわかる!
「…このっ!」
考え無しに怒りそのまま、もさ男の背中に手を伸ばす。
しかし、届く寸前で「…やめんか!」と割り込まれて邪魔が入った。
横から割り込んできて、真っ正面から両肩掴まれて体を張られて行く手を阻まれる。
一番身近なおっさんのツラを前に。



